HoloLensやImmersiveが華々しく活躍する裏で突然息を引き取った名機があります。
そうそれは紛れもなくKINECTです。
突然の生産終了の知らせ、余韻を感じるまでもなくあっという間に別れは来るものなのですね。
その後も忙しい日々を送るなかでちゃんと振り返ることができませんでしたが、紛れもなく人生を変えてくれたデバイスです。
KINECTはとても愛されたデバイスでした。
過日のことですが有志による「Kinectを偲ぶ会(葬儀告別式)」に参列しました。
KINECTを心より愛する仲間たちと素敵な思い出を語り合ったり、現役の機体で体まるごとコントローラーにして楽しむコンテンツを体験しつつ別れを惜しみました。
KINECTに初めて出会ったのは2010年末、ぼくの体をKINECTが認識しボーンが画面に表示されたとき稲妻のような衝撃が走りました。
こ、こんなデバイスがあるなんて!すごい!
そこからKINECTとの楽しい時間は始まり、それまで普通の業務システムを作っていた仕事もどんどんKINECTをつかったインタラクティブなコンテンツを作るものに変わってゆき転職していないのに事実上転職したような感じになりましたね。
そして会社にもKINECTを得意とした部署ができるまでになりました。
AIR SHODOU in Hiroshima MOCA "WIND" from yampuu on Vimeo.
本当にこれまでありがとう!楽しかった!
本当に感謝しかないですね。
引退の背景
さて、余韻に浸ってばかりもいられません。少し状況整理をしてみました。
まずMicrosoftにとってKINECTってどんな存在なの?というところ。
KINECTは成り立ちから言うとXBOXのコントローラーの一種であり、それ以上でもそれ以下でもありません。
ただとても面白いデバイスなので意図的と言われていますが一般開発者がハックしやすいようにガードがゆるくなっていてOpenNIを使ったKINECTハックが流行しました。
それを受けて純正のWindows用SDKが登場し、正式にWindows上で動くアプリケーションを一般開発者が開発できるようになりました。
ここからもわかるように、コントローラーなんだけどMicrosoftからのプレゼントとして一般開発者にも門扉が開かれたと受け止めるべきでしょう。
そして超雑ですが売り上げを計算してみました。
KINECTの出荷台数は正式に公開されていませんが、えいやっとV1が2500万台、V2が1000万台と仮定します。
Xbox 360のグローバルセールスが7,600万台を突破、Kinectは2,400万台に | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト
価格はV1=2.5万円、V2=2.2万円とします。XBOX同梱とか細かいことは棚にあげます。
するとV1売上=6250億円、V2売上=2200億円。合計8450億円となります。
Microsoftの年間売り上げをざくっと8兆円とし、2011-2017の6年間分とすると48兆円。
売上貢献度は50分の1以下なんですね。
価格の割に高性能なハードウェアは原価率高そうですし、XBOXに同梱するとXBOXが高くなって売りにくくなるとすると、KINECTを維持するにはそうとうな善意からの犠牲が必要そうだなという感じがします。
XBOX Oneへの標準添付がなくなった時点である意味今の状況は予測できたのかもしれませんね。
これから先のこと
KINECTはお星さまになりました。
でもそこで培われたテクノロジーは脈々とHoloLensや現役の製品やiPhone X(笑)に受け継がれています。
でもKINECTの最も価値あるところ、KINECTをKINECTたらしめているところってやはり高速、高精度なボディトラッキングだと思います。
これを真似できるセンサーは今後出ないような気がしています。
というのもこの認識性能の裏には莫大な人数を学習した機械学習データがあるからで、同じものを作ろうとしたらMicrosoft規模の会社でないと簡単にはできないでしょう。
ぼくがMicrosoftだったらその貴重な教師データをAzureのCognitiveServiceなどで提供することを考えます。
じき5Gが普及して高速低遅延なネットワークが使える状態になればDepth画像、またはステレオカラー画像をクラウドに送ってボディトラッキングデータが返されるようなサービスは現実性があるような気がしています。
HoloLensのような非力なデバイスでもボディトラッキングができるでしょう。
そうするとKINECTの魂はもっと広く長く人類に恩恵を与えるんじゃないかな。
そんなことをぼんやり思っています。
というわけで、重ね重ねKINECTありがとう!さようなら!
(現役の機体は後生大事に使います)